- しむ
- I
しむ(助動)〔助動詞「しも」の転。 中世後期の語〕四段活用・ナ行変格活用の動詞の未然形に付く。 動作の主体に対して尊敬の意を表す。
「かう祈られたによつてか武王のとりなほさ〈しむ〉たそ/史記抄2」
→ しも(助動)IIしむ(助動)動詞および一部の助動詞の未然形に付く。(1)使役, すなわち, 他にある動作をさせる意を表す。 しめる。 せる。 させる。「さらに帝と立てて天の下を治め〈しめ〉むと念ひて/続紀(天平神護一宣命)」「この幣の散る方に, 御舟速かに漕が〈しめ〉給へ/土左」「太子又舎人跡見に仰せて四天王に誓ひて矢をはなた〈しむ〉/著聞2」「愚かなる人の目を喜ば〈しむる〉楽しみ又あぢきなし/徒然 38」「食物ども…皆取出してくは〈しむれ〉ば釣人ども…皆よく取り食てけり/今昔26」
(2)「たまふ」など尊敬の意を表す語を下に伴って, 尊敬の意を表す。 お(ご)…なさる。 …せられる。「用意してさぶらへ。 びんなき事もあらばおもく勘当せ〈しめ〉給ふべきよしなむ仰言侍りつれば/源氏(浮舟)」「殿は何とかせ〈しめ〉給ふ/宇津保(祭の使)」「おほやけも行幸せ〈しめ〉給ふ/大鏡(時平)」
(3)「奉る」など謙譲を表す語とともに用いられて, 謙譲の意をさらに強める。「家貧ならむ折は, 御寺に申文を奉ら〈しめ〉む/大鏡(藤氏物語)」「近年御領について武蔵の長井に居住せ〈しめ〉候き/平家 7」
〔「しむ」は使役を表す助動詞として, 上代から一般に用いられたが, 中古には主として漢文訓読系の文章に用いられ, 仮名文学作品には「す」「さす」が用いられるようになった。 また, 中古には(2)(3)の敬語用法が生じ, 仮名文学作品を中心として行われた。 なお, 「見る」「得る」などの動詞に付く時, 「せしむ」の形をとる(「見せしむ」「得せしむ」)のも, 中世以降のことである〕→ しめる(助動)→ す(助動)→ さす(助動)IIIしむ【凍む】※一※ (動マ四)凍る。 凍りつく。「風吹き, いかづちなり, ~・み氷たるにも, また暑く苦しき夏も一日もかかず/宇治拾遺2」
※二※ (動マ上二)⇒ しみるIVしむ【占む】⇒ しめる(占)Vしむ【染む・沁む】※一※ (動マ五[四])「しみる」に同じ。「秋風が身に~・む」「酒壺になりにてしかも酒に~・みなむ/万葉 343」「はちす葉のにごりに~・まぬ心もてなにかは露を玉とあざむく/古今(夏)」「風も身に~・まず/平家 5」「わかれてふ事は色にもあらなくに心に~・みてわびしかるらむ/古今(離別)」
〔「染(シ)める」に対する自動詞〕※二※ (動マ上二)⇒ しみる※三※ (動マ下二)⇒ しめる(染)VIしむ【私務】自分個人の仕事。VIIしむ【締む・絞む】⇒ しめる(締)⇒ しめる(絞)
Japanese explanatory dictionaries. 2013.